早速ですが、今回はこちらの本の紹介です。
映像翻訳(英日・日英)教育と職業訓練校の専門スクールである、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)が2018年に出版した本です。
日本映像翻訳アカデミーと言えば、映像翻訳に特化したカリキュラムで有名な翻訳スクールですよね。
何を隠そう私もJVTAの修了生です。
この本は“センス”などで片づけられがちな映像翻訳の世界をロジカルに分析して、その技法を言葉に落とし込んだ画期的な一冊です。
概要
「字幕翻訳とは何か 1枚の字幕に込められた技能と理論」
発売日 2018/9/24
著者 日本映像翻訳アカデミー
本当のプロだけが知っている、最良の字幕を導き出す方法論―。
従来の翻訳研究では語られてこなかった、英語から日本語への字幕翻訳を「映像翻訳の実務と映像翻訳者の視点」から分析し、そのメカニズムを解析する。映像翻訳(英日・日英)教育と職業訓練校の専門スクールである日本映像翻訳アカデミーが、字幕翻訳の「あるべき姿と、あるがままの姿」を明文化した解説書。
ーamazon紹介ページ
字幕翻訳に特化した内容
本書は基本的に字幕翻訳に特化した内容です。
吹替翻訳やボイスオーバーにも応用できる考え方はありますが、それよりも字幕翻訳フォーカスし、その理論やルールを体系的に説明した「解説本」という位置づけです。
字幕翻訳だけでこんなに書けちゃうんだ!というくらいボリュームたっぷりの内容です。
販売はKindle版のみ!
紙好きの方には少し悲しいお知らせですが、本書は現在Kindle版のみの販売となっています。
(あくまでも予想ですが、よりタイムリーに加筆・修正を加えるようにするためかな?と思っています)
JVTAでも受講に際してこの本が配布されますが、現在はデータ配布です。
Kindleに入れておき、必要な時にすぐキーワード検索出来る環境を整えておくと良いかなと思います。
こんな人にオススメ!
本格的に字幕翻訳を学びたいと思っている人
Kindleをダウンロードして読むことが可能&抵抗のない人
自己流で字幕制作をしてきたが、一般的なルールなどを知りたい人
本書は、字幕の基本ルールや字幕ができあがるまでの基本的なプロセスを、
“センス”や”なんとなく”という感覚に頼ることなく、学術的なタッチで紐解く解説書です。
むしろ、全く翻訳と関わりの無かった人が題名通り「字幕翻訳ってなんだろう?」と軽い気持ちで開く入門書にしては、ちょっと内容が技術的なので目が回ってしまうかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は字幕翻訳とは何か 1枚の字幕に込められた技能と理論を紹介しました。
この本、初めて読んだのはJVTA入学前でしたが、読んで「内容濃すぎる・・・!!」と衝撃を受けました。
映像翻訳学習者に対する手ほどきの参考書、というよりも、AIや自動翻訳の台頭、また、一般の方がYouTubeなどの動画に趣味で字幕を付ける所謂「ファンサブ」の広がりなどによる”映像翻訳のコモディティ化“に対して警鐘を鳴らしているメッセー性の強い本であるように思えたからです。
「プロの映像翻訳者の存在価値って何?お金を払ってまで依頼するメリットあるの?」
そんな声に対して、
「いや、AIやファンサブがつけた字幕には、この本の理屈が実践されていない。
でも、人を惹き込み、作品とシンクロする字幕を付けるには、この理屈を理解し、駆使することが不可欠だ。
つまり、どの時代においても、価値のある字幕を付けられるのはプロの映像翻訳者しかいない。
そして、「感覚」「センス」で片付けられがちな字幕翻訳だが、プロの作る字幕には普遍的な技能と理論が確かに詰まっているのだ・・・!」
と返す。
そして最後にこの本を手渡し、
「嘘だと思うならこれを読んでみて。。」
そんな場面が想像できそうな(?)、魂のこもった一冊です。
また、実際に講義を受けてみて、その内容もかなり網羅しているなと感じています。
これさえ読んでおけばまず入り口としては、相当理解が深まるだろうなと思いました。
いつか吹替翻訳Ver.も出るのでしょうか。密かに楽しみにしています。