これまでスクール選びについて数記事に亘って書いてきましたが、実際に私がどのような学習を経て今に至るのか、あまり詳しく書いていませんでした。
そこで本記事では、私の場合の学習遍歴を紹介します。
私の個人的な事情や主観にまみれたの記事となってしまいますが、1つの例としてご覧いただければ幸いです。
私の学習遍歴
私はどちらかというと、なるべく早くプロスキルを身につけたいと思いつつも、
かなり回り道をしながら学習してきたタイプです。
- 2018年 翻訳スクール検討開始。
↓ - 【通信】
フェロー・アカデミー
step18
↓ - 【通信】
フェロー・アカデミー
映像翻訳(初級)
↓
↓(試験を受けて、通信→通学に変更) - 【通学(途中から完全リモート)】
フェロー・アカデミー
映像翻訳(中級)
↓
↓(個別面談を経て、編入) - 【通学(完全リモート)】
日本映像翻訳アカデミー
総合2クラス
↓ - 【通学(完全リモート)】
日本映像翻訳アカデミー
実践クラス
1つ1つ説明させていただきます。
【通信】フェロー・アカデミー step18受講
当時の私は母親になりたてで、首もまだ座らない娘を抱きながら、やる気に燃えていました。笑
夢とやる気は膨らんでいくけど、やはり現状を把握して自分に合ったプランを立てようと考えて選んだのがこのコースです。
現状把握の大切さについては以下の記事にまとめました。
コースの概要
翻訳に必要な英文法を18のステップで習得する。
受講形態:通信講座
期間:9ヶ月/月2回提出
受講料:約70,000円
私の感想
英語にはそれなりに自信があったものの、“翻訳”についての知識はゼロ。
まずは翻訳の入り口となる正しい英文法を学び直しながら、翻訳という世界について広く学んでみようと思い、このコースにしました。
結果、さび付いていた“脳みそのの引き出し”に油をさすことができたので、受講して本当に良かったなと感じています。
step18では名前の通り18個のテーマ(主に文法のカテゴリーで分けられている)がそれぞれA4の薄いテキストに纏まって届きます。
テキストには説明と例文、提出用の課題文がついているので、自分で学習した後に課題に取り組んで提出すると、点数と丁寧なフィードバックが付いて返却される、これを繰り返すというコース内容です。
もちろん学習中の気付きも多く、翻訳への理解が深まりましたが、
それ以上にカテゴリーごとに纏まっている自分用のまとめノートが1つ出来たのが私の中ではとても大きな財産になりました。
今でも“この場合の仮定法はどう訳せばいいんだっけ?”というようなときに、市販の文法参考書と併せて必ず確認しています。笑
ただ、このコースが映像翻訳の分野において直接的なテクニックとして活かされるか、というと必ずしもそうとは言えないかもしれません。
映像翻訳には特殊な制限や技法が沢山あり、訳文を練るまでの過程でそれらの特殊性を考慮することがとても重要になってくるからです。
とはいえ、どんな分野の翻訳者を目指すにしても英語力・(自然な言い回しの幅を広げる)翻訳力は大事な大事なベーススキルなので、
原文を正しく読み、自然な翻訳とは何か?を基礎から学びたい方にはとても意味のあるコースだと思います。
【通信】フェロー・アカデミー 映像翻訳【初級】
当時遠方に住んでいた私にとって通学という選択肢はありませんでした。
step18で基礎固めをしたので次はいよいよ映像翻訳を学ぼうと思い、フェロー・アカデミーの通信講座を申し込みました。
コースの概要
映像翻訳の制作プロセスを理解し、「吹替」「字幕」のルールを習得しながらそれぞれの手法に沿った翻訳テクニックを学ぶ。
コース名:はじめての映像翻訳
受講形態:通信講座
期間:3ヶ月/月2回提出
受講料:約47,000円
私の感想
通学出来る環境であればそれを選んだとは思いますが、結果として、入門的な学習に関しては通信講座でも全く問題なかったな、というのが正直な感想です。
step18同様、テキストにはそれぞれに学習(ボリュームは少なめ)と課題文があり、各々取り組んでWordファイルで提出します。
その後、修正コメントが所々記載されて返却される流れです(全6回)。
※手書きではなく、デジタルでの修正でした。
翻訳スクールの中には、字幕コース・吹替コースなど、どちらか一つに特化したコースも存在しますが、まだそれぞれの特徴や違いすらちゃんと理解していない私にとって字幕・吹替両方の基礎が学べたのも良かったなと思っています。
特に中盤の課題からは同じ原文に対して字幕・吹替の両パターンで原稿を作るという課題だったため、両者の違いがよく分かりました。
吹替原稿で出せたニュアンスが字幕になったとたん、全く出せない!
漢字が見えなくて音だけが頼りの吹替では、字幕で使えてたあの単語は使えないよな。。!
など、初歩的ながら多くの気付きを得ることが出来ました。
短い期間で字幕と吹替両方の基本的なルールを知り、それらの違いにも慣れることが出来た、ある意味“コスパの良い”講座でした。
【通学】フェロー・アカデミー 映像翻訳【中級】
初級を学んでいる最中に関東圏に戻ることが出来たので、思い切って通学に切り替えることに。
通信から通学に切り替える際は、スクールに相談して試験を受ける必要があります。
私の時は作品の一部を和訳・字幕作成・吹替原稿作成するというものでした。
当時の私にとっては初めてのトライアルという気分でとてもハードルが高く感じられましたが、初級で得た知識をフル活用することで合格をいただきましたので、基礎がある程度身についていると判断していただければ、通学に切り替えさせてもらえるのではないかなと思います。
コースの概要
長編映画を題材に、ストーリー展開を重視したセリフ/字幕作りや視聴者を作品に惹き込むテクニックを学ぶ。
コース名:吹替・字幕
受講形態:通学講座
期間:5ヶ月(3週に1回)
受講料:約93,000円
私の感想
コースを通じて、題材は長編映画1本。
毎回の講義で取り組む範囲について担当が振り分けられて、自分が担当になった回については事前に訳文or原稿を提出します。
講義ではその提出物を皆で見ていき、先生の指摘やコメントを仰ぐという流れです(全8回)。
コースの前半は字幕、後半は吹替原稿を作成します。
最後には、自分の書いた吹替原稿を、プロの声優の方に読んでいただく機会もあります。
先生のプロの技を目の当たりにする度に目から鱗が落ちる感覚でした。
しかし、同時に自分はこのままもがき続けても絶対に先生のようにはなれないと察します。
「ここは表現が大げさで目立つ」「●●と言い換えたほうがいい」など指摘を聞くと「なるほど確かに!」と納得するのですが、その指摘を別の素材でどう活かせばいいかピンとこないのです。
それは、実践が少なすぎて、指摘の裏にあるそもそものルールや理屈を自分のものにできていないことが原因でした。
土台がしっかり出来ていないから、レベルの高いテクニックの知識が降ってきても着地する場所を失っていたのだと思います。
今の自分に必要なのは先生の指摘を感覚的に理解できるようになるための理屈と理論に基づいた土台固めだと思った私は、そのまま上級には進まずに、フェロー・アカデミー以外にも目を向けるようになります。
学習の間を空けずに先に進みたい私にとって、上級のスタートまでの間に半年ほど期間があったこともネックでした。
そして、日本映像翻訳アカデミーのオープンスクールに参加してここだ!と思った私は、編入することを決めます。
※基本的には総合1→総合2→実践コースと段階を重ねていくことが求められているので、編入が受け入れられるかはそれまでの学習遍歴などを考慮して、ケース・バイ・ケースとのことでした。
ただ、編入の意志を示せば個別に面談を設置していただけるので、迷う場合は一度聞いてみたら良いと思います。
私はまさにオンライン面談を経て、編入することを認めてもらえたという感じです。
(もちろん入学金を改めて払ったり、どうしても講義でギャップを感じることはあります。慎重な判断が必要です!笑)
【通学】日本映像翻訳アカデミー 総合2クラス
私の印象ですが、カリスマ的な先生から熟練の技を伝授していただくスタイルのフェロー・アカデミーと比べて、日本映像翻訳アカデミーはとにかく実践的です。
翻訳の手法を学ぶと言うのももちろんですが、プロの翻訳者になるスキルを網羅的に学ぶというスタンスが強く、
様々な側面からバックアップを行う映像翻訳者育成の為のアカデミックな訓練校という印象を受けました。
全21回のカリキュラムもその前提でしっかりと組まれており、中には「フリーランサーとしての働き方」という講義があるほど、プロになるにあたって必要な知識・スキルを総合的に学習する内容になっています。
コースを通じて1人の先生から教わるのではなく、毎回の講義内容に合わせて別々の先生が教壇に立つのもこのスクールの特徴の1つだと思います。
翻訳に“正解はない”とわかっていつつも、「こういうときは、●●の理由でAの訳語を選ぶ」などある程度ベースとなる指針を身につけることができるので、まさに私の求めていた土台固めが出来るコースだったと思います。
コースの概要
多様なジャンルへの対応力を身につける。視聴者を意識した原稿の書き方を学ぶ。
コース名:英日映像翻訳科 総合コース・Ⅱ
受講形態:通学(完全リモート開催)
期間:6ヶ月(毎週)
受講料:約210,000円
私の感想
オープンスクールの説明通り、プロになるための実践的なスキルを効率よく学べた半年でした。
コロナの影響で完全リモートになりましたが、日本映像翻訳アカデミーは早くからオンラインでの授業を取り入れていたこともあり、その弊害を感じることはほぼありませんでした。
周りのクラスメイトは総合1から受けているし、その前提で講義も進むので、知識面で追いついていないと感じることもありましたが、そこについても大きくマイナスを感じることはなかったです。
講義は様々なジャンルの課題(5分程度の尺)に対して、クラスメイト全員の提出分を並べつつ、先生からのフィードバックを頂くという流れでした。
求められる翻訳手法は毎回違い字幕、吹替、ボイスオーバーと様々で、ジャンルも軽いコメディがあったと思えばドキュメンタリー番組や情報番組など固めの素材が来たり・・・と多岐に亘わたったので、毎回頭を切り換えるのが大変でした。
自分の担当回の時はじっくり訳をみてもらえたフェローに対して、講義での個々人へのフィードバックは当然うすくなりますが、クラスメイト全員の訳を踏まえ比較しながら指摘をしていただけるし、講義とは別に添削した原稿を返却してくださる先生もいらっしゃったりして、その点で自分の課題が放置されている感覚にはなりませんでした。
【通学】日本映像翻訳アカデミー 実践クラス
総合2の学習をふまえて、プロになるためのより実践的な訓練を積むコースです。
実際に案件を受注しているというスタンスで課題に取り組むことで、より高いレベルの実践力をブラシアップしていきます(全22回)。
そして、実践のすべての講義が終わった後はその流れで「修了トライアル」を受けます。
卒業試験のようなもので、そこに合格すると、JVTAに付属しているエージェントから仕事を受ける、つまり、翻訳者デビューすることが出来ます。
(ただしこの修了トライアル、残念ながら受ければ合格するというものではありません。
修了トライアルに一発合格するというのはもちろん皆の目標ですが、狭き門なのが現状です。
基本的にはそのあとも2、3ヶ月に1回のオープントライアルと呼ばれるものに挑戦し続ける中で合格をつかむ人が多いので、その現状を踏まえつつ、キャリアを考えることも大切かなと思います。)
コースの概要
プロとしての実務フローを習得する(量・スピードへの対応力、チーム翻訳)原稿の完成度を上げ、プロとして通用するレベルを目指す。
コース名:英日映像翻訳科 実践コース
受講形態:通学(完全リモート開催)
期間:6ヶ月(毎週)
受講料:約230,000円
私の感想
いろんな意味で「本気」の6ヶ月です。
とにかく課題のレベルや講師の要求する水準、クラスメイトの士気などが一気に上がりました。
カリキュラム自体も、より実際の受注から納品までの一連の流れを意識しているのを感じます。
ひとつひとつの課題を実際の仕事だという姿勢で取り組み、そのように仕上げてきた互いの課題を見ながら講師のフィードバックを受けます。
課題の分量と内容も総合2と比べて多く、濃くなり、しっかりとした調べ物を要求されるものが増えます。
それを毎週の講義にあわせて取り組み、提出していくというサイクルを6ヶ月ひたすら回すことになるので、その点でかなり大変でした。
その厳しさもあってか、クラスメイト同士の絆はかなり強くなったように感じます。
住んでいる場所も年齢も背景もバラバラだしオンラインでしか話さない仲なのに、そんなことを感じさせない繋がりがうまれたことは、何にも代えがたい財産となりました。
日本映像翻訳アカデミーのそれぞれのコースの最後には、スクールが独自に定めた“映像翻訳者に必要な6つの資質”にたいして、自分の課題のパフォーマンスがどうだったかを示す評価表もいただけます。
客観的に自分の強み・弱みを知ることが出来て(落ち込んだりもしますが)とても有り難かったです。
まとめ
いかがでしょうか。
改めて書き出してみると、ここまで色々と受けてきたなと実感します。
本来であれば、スクールが用意してくれるプログラムを最初から最後まで一貫して受けたほうが、効率よく知識やスキルが身につくのかも知れません。
私は特殊で、通信&通学、フェロー・アカデミー&日本映像翻訳アカデミーとその時々の状況に合わせて色々つまみ食いをしてきました。
でもどの講義も特徴的で意義深く、多くの気付きを得ることができたので、自分のその時々の選択にはとても満足しています。
時間はかかりましたが、これだけじっくり取り組んできたからこその今なんだと思えるからです。
まぁでもあっちいったりこっちいったり、見るからに面倒くさいですよね。
こんな人もいるんだ、という程度に参考にしていただけたら嬉しいです。笑